【 第21回世界絵画大賞展 2025 】審査員講評- 審査委員長
遠藤 彰子( Endo Akiko )
1947年 東京都生まれ
1969年 武蔵野美術短期大学卒業
1978年 昭和会展林武賞受賞
1986年 安井賞展安井賞受賞、文化庁芸術家在外特別派遣 (~87年/インド)
1992年 個展「遠藤彰子展-群れて…棲息する街-」(西武アート・フォーラム)
2004年 個展「遠藤彰子展-力強き生命の詩」(府中市美術館)
2007年 平成十八年度芸術選奨文部科学大臣賞
2014年 個展「魂の深淵をひらく-遠藤彰子展」(上野の森美術館) / 紫綬褒章受章
2015年 個展「Ouvrir la profondeur de l’âme」(パリ国立高等美術学校/フランス)
2021年 個展「遠藤彰子展-魂の旅」(鹿児島市立美術館) / 個展「物語る 遠藤彰子展」(平塚市美術館)
2023年 毎日芸術賞受賞
2024年 個展「遠藤彰子展-生々流転」(札幌芸術の森美術館) / 個展「遠藤彰子展」(新潟市美術館)
2025年 個展「遠藤彰子展 -時のつぶやき-」(東京 / 日動画廊)
現在 武蔵野美術大学名誉教授、二紀会理事、女流画家協会委員。 
「 審査を終えて 」
第22回世界絵画大賞展は、山口晃先生を審査員にお迎えしたこともあり、近年の最高応募者数を記録しました。その熱量に応えるべく、時間をかけ厳正な選考を行いました。
大賞に輝いたかわしまともこさんの『君はだあれ?(Who are you?)』は、夕暮れの古い木造校舎の長い廊下が舞台です。振り返る狐面の少年と、静かに見つめる狐が対になり、現実と異界の境界のような不思議な場面を生み出しています。懐かしい風景に妖しい気配が忍び込み、幼少期の不安や孤独、あるいは心の奥に潜む影と出会うような感覚と重なります。日常と非日常が静かに溶け合う、奥行きのある作品です。
優秀賞の窪田成美さん『向こう側の世界』は、少女が見つめる外の世界か、私たちが覗く彼女の世界なのか。人形のような少女の曖昧な視線が、見る側と見られる側の関係を交差させます。植物と白いタイル壁の対比も印象的で、無機質な空間が少女の孤立や隔絶を感じさせ、静かな違和感として心に残ります。
同じく優秀賞の山川智隆さん『前と後ろの間』は、ガラス越しのような多層的な空間表現が目を引きます。反射と透過が重なり、内と外の境界は曖昧です。硬質な構造に外の草木や淡い光が入り込み、実像と映り込みが交差することで、現実と記憶がせめぎ合う心象風景のように感じられました。
遠藤彰子賞の王禎さん『林祭』は、自由で躍動感のある筆致が独特の生命感を与えています。有機的な形が具象と抽象のあいだを行き来する魅力があり、色と形が幻想的な夢のように溶け合っています。美しさの奥にあるざわめきや危うさが強い引力を生む、密度の高い作品です。
今回は抽象的・概念的な作品が多く見られた一方で、言葉に頼らずとも世界観を提示できる、技術とコンセプトの完成度が高い作品が上位に選ばれた印象です。次回も皆様のさらなる挑戦を期待しております。

審査員
諏訪 敦( Suwa Atsushi )
1967年 北海道生まれ
1992年 武蔵野美術大学大学院修士課程修了
1994年 文化庁芸術家派遣在外研修員(2年派遣 スペイン・マドリード在住)
1995年 第5回バルセロ財団主催 国際絵画コンクール 大賞受賞 (スペイン)
2003年 第22回 損保ジャパン美術財団選抜奨励賞展 秀作賞受賞 (SOMPO美術館)
2005年 1st 作品集 「諏訪敦 絵画作品集1995-2005」を刊行 (求龍堂)
2007年 個展「ふたたびあいまみえ 舞踏家・大野一雄」(Gallery Milieu)
2008年 個展「複眼リアリスト」(佐藤美術館)
2011年 NHK『日曜美術館 記憶に辿りつく絵画~亡き人を描く画家~』にて単独特集。
個展「一蓮托生」(成山画廊) / 「どうせなにもみえない」(諏訪市美術館)
2nd 作品集 「諏訪敦 絵画作品集 どうせなにもみえない」を刊行 (求龍堂)
2014年 「Currents Japanese contemporary art」(James Christie Room)
3rd 作品集 「Sleepers 安睡者」を刊行 (Kwai Fung Hin Publishing House)
2016年 ETV特集「忘れられた人々の肖像~画家・諏訪敦 満州難民を描く」
2017年 個展「諏訪敦 2011年以降/未完」(三菱地所アルティアム)
4th 作品集 「諏訪敦 絵画作品集 Blue」を刊行 (青幻舎)
2019年 個展「實非實.虚非虚」 “Solaris” (Kwai Fung Hin Art Gallery)
2022年 個展「諏訪敦 眼窩裏の火事」(府中市美術館)
5th 作品集 諏訪敦作品集「眼窩裏の火事」を刊行 (美術出版社)
2024年 森岡書店 ギャラリー小柳 共同企画展「ONE SINGLE BOOK」(ギャラリー小柳)
2025年 個展「きみはうつくしい」(WHAT MUSEUM)
6th 作品集「諏訪敦 きみはうつくしい」を刊行 (青幻舎)
「ゴースト 見えないものが見えるとき」(アーツ前橋)
2026年 「NHK日曜美術館50年展」(東京藝術大学大学美術館)
現在 武蔵野美術大学教授 / 画家
「 断片的でも伝わる絵画 」
世界絵画大賞展は、若年層から美大生、または後期高齢者まで、幅広い属性の応募者に愛され、引き継がれてきたコンクールである。審査では、稀に突き抜けた発想の作品に出会えたり、ときには自らの狭量さに気付かされることもあって、いつも長引いてしまう。とはいえ今回は、旧知の山口晃さんが審査に加わってくれて、彼の軽妙洒脱な呟きを耳にしながらの審査は、終始楽しかった。
個人的に印象に残った作品について。今回に限っては、ひとつの画面で多くを語ろうとはしていない、端的で断片的な絵を選んでいたように思う。理由はうまく説明できないが、逆に饒舌すぎる作品について、今回は支持できなかった。
私が大賞候補に推したのは2作品。まず、南藤陸さんの「空の青さを描きたくて」だ。この作品からは特に描くという行為にまつわる必然とせつなさを感じて、がんばって推したのだが、残念ながら私だけの支持にとどまった。いずれ世に出てくるものと期待したい。もうひとつは窪田成美さん「向こう側の世界」だが、本作には不穏な静けさがある。ドールや生命を持たぬ物体に演じさせ、何かを仄めかす趣向はめずらしくはないが、この作者にとって、現時点のベストを出してきたような直感があった。話し合いの末、優秀賞に落ち着いた。
個人賞については、伸び代を感じさせる柳勇我さん「努めて浅はかにあなたを」にした。ベラスケス〜マネへと隔世遺伝してきたような、ラフな筆捌きで画力を示す描き方は、現代の若手ペインターの多くに支持されている。このような動向も、このコンクールの歴史に記録しておくべきと考え、発表を始めたばかりのこの若者を受賞者とした。
他に目にとまった作品をいくつか挙げてみよう。王禎さん「林祭」、吉田諭史さん「reminiscence」、松尾典汰さん「刻みの層」、永田ひなのさん「あぶく」など。他にもまだまだ惹かれる作品はあった。そして諏佐成子さん「あさげの時」の可愛らしさは、理屈の壁をひょいと軽やかに乗り越えて心の隣に収まってしまう。つい推してしまった次第。
- 審査員
山口 晃(Yamaguchi Akira )
1969年 東京都生まれ、群馬県桐生市に育つ
1994年 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
1996年 東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修士課程修了
2001年 第4回岡本太郎記念現代芸術大賞優秀賞受賞
2012年 個展「望郷TOKIORE(I)MIX」(銀座メゾンエルメス フォーラム)
2013年 『ヘンな日本美術史』(祥伝社)で第12回小林秀雄賞受賞
個展「山口晃展 画業ほぼ総覧—お絵描きから現在まで」(群馬県立館林美術館)
2015年 個展「山口晃展 前に下がる 下を仰ぐ」(水戸芸術館現代美術ギャラリー)
2018年 個展「Resonating Surfaces」(大和日英基金ジャパンハウスギャラリー、ロンドン)
2019年 NHK大河ドラマ「いだてん 〜東京オリムピック噺〜」オープニングタイトルバック画を制作
2020年 東京2020パラリンピック公式アートポスターを制作
2023年 個展「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」(アーティゾン美術館)
日本の伝統的絵画の様式を用い、油絵という技法を使って描かれる作風が特徴。
都市鳥瞰図・合戦図などの絵画のみならず立体、漫画、インスタレーションなど表現方法は多岐にわたる。
成田国際空港、東京メトロ日本橋駅のパブリックアートや、新聞小説・書籍挿画・装画など幅広い制作活動を展開。 
「 審査評抄 」
私は自分から賞に応募するメンタリティがないものですから、応募される皆さんは強い心をお持ちなのだと敬服いたします。色々な動機がおありでしょうが、賞にかからなかったからといって何かネガティヴな心持ちにだけはなられませんよう願うものです。
絵が描けたというだけで、そこに絵はやってきてくれたのですし、それは絵に受け入れられたということです。もう、祝福されているということです。
皆さんに良い制作の時が訪れますよう。
優秀賞、山川智隆さんの「前と後ろの間」。
ガラス越しの実像とガラス面に映った虚像の織り成す空間。目で追うほどに幻惑されますが、虚像と実像は消失点を共有し、目を画面の奥へと導く実像の引力と虚像による斥力が含まれるのを感じます。
透過図法とでもいうべき遠近法の実践の中に、油彩画における透明層と基底面を作る不透明層の関係が、モティーフの透過性と艶の引けたテンペラによる荒い絵肌の関係へと変奏されたようであり、見えざるガラス表面と虚実の像が織りなす関係や、線遠近法に寄与する要素と平面レイヤとの関係へと読み替えられたようでもあります。
明部が「明」ではなく「白」になり気味なのはタイトルを鑑みるに意図的かも知れませんが、明部に適切な色相を付与して得られるであろうよりクリアな空間性のヴァージョンにも興味が湧きます。
山口晃賞は米田真善美さん「自然の融合」。
暗渠の出口と思しき、陽の差し込む水路。暗渠内からはアーチ状の天井が水面に映って円を成して見えます。作者はこの現象に触発されたのか、暗渠出口を水平方向に一度、更に垂直方向に一度鏡像展開させ、都合四つも描き出します。象限よろしく四つ並んだ緑の円の景を、なんと見れば良いのでしょう。
巨大な複眼を持ちその眼に世界を映す昆虫のようであり、青い地球を型どり四態を表した天文機器のようでもあります。世界を見る目であり、見られる世界そのものでもあるのです。しかし、何より思うのは、それらの形を絵にしたというよりは、この絵自体を装置にして何かを観測した痕跡のように見えて仕方ないということです。
それには、このおぼつかない筆跡が与えてくる印象が大きく、暗色の下地の上にとつとつと置かれる白い絵の具は、各象限に一義に打った座標のようで、一筆へのこだわりが雪がれています。そこに加えられるグレージングが大変効果的で、透明度は画面に抜けの良さと広がりを与え、響き合う緑と紫が筆致のおぼつかなさを豊かに潤し、層的な重なりは空間の圧縮度合いを示し、座標とは異なる観測の指標を表すようです。
全体を知りようもないくらい大きく遠いものに絵と筆を通して触れようとした、素晴らしく謎めいて美しい痕跡。作者のお名前、真・善・美のうちの一つ「美」という、或る完全性のへのアプローチ。そのように見える作品です。

- 審査員
山下 裕二( Yamashita Yuji )
1958年、広島県生まれ
東京大学大学院修了。
美術史家。
明治学院大学文学部芸術学科教授。
室町時代の水墨画の研究を起点に、縄文から現代美術まで、日本美術史全般にわたる幅広い研究を手がける。
著書に『室町絵画の残像』『岡本太郎宣言』『日本美術の二〇世紀』『狩野一信・五百羅漢図』『一夜漬け日本美術史』『伊藤若冲鳥獣花木図屏風』『水墨画発見』『日本美術の底力』『商業美術家の逆襲』『日本美術をひらく』など。
企画監修した展覧会に『ZENGA展』『雪村展』『五百羅漢展』『白隠展』『超絶技巧!明治工芸の枠』『20世紀琳派 田中一光』『小村雪岱スタイル』『コレクタ-福富太郎の眼』などがある。
「 絵を描く喜び 」
今回は、出品点数1066点、出品者数822名もの応募があった。前回からさらに増えて、ここ15年でもっとも多い結果となったという。私が審査員をつとめるのは11回目だが、コロナ期をはさんで、その後この公募展が広く認知されてきたことを喜ばしく思う。
大賞を受賞したかわしまともこさんの「君はだあれ?(Who are you?)」は、私がもっとも強く推した作品である。古びた小学校の廊下が極端な透視遠近法で描かれている。光と影の描写が秀逸だ。キツネの面を付け、制服を着てランドセルを背負った少年が振り返る。その視線(面で隠されているので目は描かれていないが)の先には、やはりランドセルを背負ったキツネがいる。そしてキツネの後頭部には少年の顔のお面が。作者は、いったいどうしてこんなヴィジョンを脳裏に浮かべることができたのだろう。童話などに触発されたのか、そうではないのか、授賞式の折にぜひ聞いてみたいと思う。ともあれ、絵を描く喜びがいちばん伝わってきたのは、この作品だった。
東京都知事賞を受賞したnobuさんの「BEYOND THE MEMORYⅡ」という作品も、私が一次審査の段階から高く評価した作品だった。これはまさに、昭和という時代の記憶を描き込んだ作品。中央に描かれるのは、学校の先生と12人の生徒。壺井栄の「二十四の瞳」の一場面だろう。その左上には、8時15分で止まった時計。広島に原爆が投下された時刻である。その他にも、昭和の記憶を物語る情景がさまざまに描き込まれて、前景には後ろ姿の現代の少年少女が。私も、子や孫に昭和の記憶を伝えたいと思っているから、そんなメッセージに深く共感した。
そして、私の個人賞とした和崎正美さんの「煩悶」という作品。これは、間違いなく今回の応募作の中で最高の写実的技量を示したものだと思う。人体、衣服の描写はもちろん、黒板に書かれた文字がいい。私以外の審査員は全員実作者だから、こういうまっとうなリアリズムの作品を評価しにくい傾向があると思う。だからこの作品を高く評価し、私の個人賞とした。
授賞式で作者たちと語らうことを楽しみにしています。
【 第21回世界絵画大賞展 2025 】審査員講評
- 審査委員長
遠藤 彰子( Endo Akiko )
1947年 東京都生まれ
1969年 武蔵野美術短期大学卒業
1978年 昭和会展林武賞受賞
1986年 安井賞展安井賞受賞、文化庁芸術家在外特別派遣 (~87年/インド)
1992年 個展「遠藤彰子展-群れて…棲息する街-」(西武アート・フォーラム)
2004年 個展「遠藤彰子展-力強き生命の詩」(府中市美術館)
2007年 平成十八年度芸術選奨文部科学大臣賞
2014年 個展「魂の深淵をひらく-遠藤彰子展」(上野の森美術館) / 紫綬褒章受章
2015年 個展「Ouvrir la profondeur de l’âme」(パリ国立高等美術学校/フランス)
2021年 個展「遠藤彰子展-魂の旅」(鹿児島市立美術館) / 個展「物語る 遠藤彰子展」(平塚市美術館)
2023年 毎日芸術賞受賞
2024年 個展「遠藤彰子展-生々流転」(札幌芸術の森美術館) / 個展「遠藤彰子展」(新潟市美術館)
2025年 個展「遠藤彰子展 -時のつぶやき-」(東京 / 日動画廊)
現在 武蔵野美術大学名誉教授、二紀会理事、女流画家協会委員。 
第22回世界絵画大賞展は、山口晃先生を審査員にお迎えしたこともあり、近年の最高応募者数を記録しました。その熱量に応えるべく、時間をかけ厳正な選考を行いました。
大賞に輝いたかわしまともこさんの『君はだあれ?(Who are you?)』は、夕暮れの古い木造校舎の長い廊下が舞台です。振り返る狐面の少年と、静かに見つめる狐が対になり、現実と異界の境界のような不思議な場面を生み出しています。懐かしい風景に妖しい気配が忍び込み、幼少期の不安や孤独、あるいは心の奥に潜む影と出会うような感覚と重なります。日常と非日常が静かに溶け合う、奥行きのある作品です。
優秀賞の窪田成美さん『向こう側の世界』は、少女が見つめる外の世界か、私たちが覗く彼女の世界なのか。人形のような少女の曖昧な視線が、見る側と見られる側の関係を交差させます。植物と白いタイル壁の対比も印象的で、無機質な空間が少女の孤立や隔絶を感じさせ、静かな違和感として心に残ります。
同じく優秀賞の山川智隆さん『前と後ろの間』は、ガラス越しのような多層的な空間表現が目を引きます。反射と透過が重なり、内と外の境界は曖昧です。硬質な構造に外の草木や淡い光が入り込み、実像と映り込みが交差することで、現実と記憶がせめぎ合う心象風景のように感じられました。
遠藤彰子賞の王禎さん『林祭』は、自由で躍動感のある筆致が独特の生命感を与えています。有機的な形が具象と抽象のあいだを行き来する魅力があり、色と形が幻想的な夢のように溶け合っています。美しさの奥にあるざわめきや危うさが強い引力を生む、密度の高い作品です。
今回は抽象的・概念的な作品が多く見られた一方で、言葉に頼らずとも世界観を提示できる、技術とコンセプトの完成度が高い作品が上位に選ばれた印象です。次回も皆様のさらなる挑戦を期待しております。

審査員
諏訪 敦( Suwa Atsushi )
1967年 北海道生まれ
1992年 武蔵野美術大学大学院修士課程修了
1994年 文化庁芸術家派遣在外研修員(2年派遣 スペイン・マドリード在住)
1995年 第5回バルセロ財団主催 国際絵画コンクール 大賞受賞 (スペイン)
2003年 第22回 損保ジャパン美術財団選抜奨励賞展 秀作賞受賞 (SOMPO美術館)
2005年 1st 作品集 「諏訪敦 絵画作品集1995-2005」を刊行 (求龍堂)
2007年 個展「ふたたびあいまみえ 舞踏家・大野一雄」(Gallery Milieu)
2008年 個展「複眼リアリスト」(佐藤美術館)
2011年 NHK『日曜美術館 記憶に辿りつく絵画~亡き人を描く画家~』にて単独特集。
個展「一蓮托生」(成山画廊) / 「どうせなにもみえない」(諏訪市美術館)
2nd 作品集 「諏訪敦 絵画作品集 どうせなにもみえない」を刊行 (求龍堂)
2014年 「Currents Japanese contemporary art」(James Christie Room)
3rd 作品集 「Sleepers 安睡者」を刊行 (Kwai Fung Hin Publishing House)
2016年 ETV特集「忘れられた人々の肖像~画家・諏訪敦 満州難民を描く」
2017年 個展「諏訪敦 2011年以降/未完」(三菱地所アルティアム)
4th 作品集 「諏訪敦 絵画作品集 Blue」を刊行 (青幻舎)
2019年 個展「實非實.虚非虚」 “Solaris” (Kwai Fung Hin Art Gallery)
2022年 個展「諏訪敦 眼窩裏の火事」(府中市美術館)
5th 作品集 諏訪敦作品集「眼窩裏の火事」を刊行 (美術出版社)
2024年 森岡書店 ギャラリー小柳 共同企画展「ONE SINGLE BOOK」(ギャラリー小柳)
2025年 個展「きみはうつくしい」(WHAT MUSEUM)
6th 作品集「諏訪敦 きみはうつくしい」を刊行 (青幻舎)
「ゴースト 見えないものが見えるとき」(アーツ前橋)
2026年 「NHK日曜美術館50年展」(東京藝術大学大学美術館)
現在 武蔵野美術大学教授 / 画家
世界絵画大賞展は、若年層から美大生、または後期高齢者まで、幅広い属性の応募者に愛され、引き継がれてきたコンクールである。審査では、稀に突き抜けた発想の作品に出会えたり、ときには自らの狭量さに気付かされることもあって、いつも長引いてしまう。とはいえ今回は、旧知の山口晃さんが審査に加わってくれて、彼の軽妙洒脱な呟きを耳にしながらの審査は、終始楽しかった。
個人的に印象に残った作品について。今回に限っては、ひとつの画面で多くを語ろうとはしていない、端的で断片的な絵を選んでいたように思う。理由はうまく説明できないが、逆に饒舌すぎる作品について、今回は支持できなかった。
私が大賞候補に推したのは2作品。まず、南藤陸さんの「空の青さを描きたくて」だ。この作品からは特に描くという行為にまつわる必然とせつなさを感じて、がんばって推したのだが、残念ながら私だけの支持にとどまった。いずれ世に出てくるものと期待したい。もうひとつは窪田成美さん「向こう側の世界」だが、本作には不穏な静けさがある。ドールや生命を持たぬ物体に演じさせ、何かを仄めかす趣向はめずらしくはないが、この作者にとって、現時点のベストを出してきたような直感があった。話し合いの末、優秀賞に落ち着いた。
個人賞については、伸び代を感じさせる柳勇我さん「努めて浅はかにあなたを」にした。ベラスケス〜マネへと隔世遺伝してきたような、ラフな筆捌きで画力を示す描き方は、現代の若手ペインターの多くに支持されている。このような動向も、このコンクールの歴史に記録しておくべきと考え、発表を始めたばかりのこの若者を受賞者とした。
他に目にとまった作品をいくつか挙げてみよう。王禎さん「林祭」、吉田諭史さん「reminiscence」、松尾典汰さん「刻みの層」、永田ひなのさん「あぶく」など。他にもまだまだ惹かれる作品はあった。そして諏佐成子さん「あさげの時」の可愛らしさは、理屈の壁をひょいと軽やかに乗り越えて心の隣に収まってしまう。つい推してしまった次第。
- 審査員
山口 晃(Yamaguchi Akira )
1969年 東京都生まれ、群馬県桐生市に育つ
1994年 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
1996年 東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修士課程修了
2001年 第4回岡本太郎記念現代芸術大賞優秀賞受賞
2012年 個展「望郷TOKIORE(I)MIX」(銀座メゾンエルメス フォーラム)
2013年 『ヘンな日本美術史』(祥伝社)で第12回小林秀雄賞受賞
個展「山口晃展 画業ほぼ総覧—お絵描きから現在まで」(群馬県立館林美術館)
2015年 個展「山口晃展 前に下がる 下を仰ぐ」(水戸芸術館現代美術ギャラリー)
2018年 個展「Resonating Surfaces」(大和日英基金ジャパンハウスギャラリー、ロンドン)
2019年 NHK大河ドラマ「いだてん 〜東京オリムピック噺〜」オープニングタイトルバック画を制作
2020年 東京2020パラリンピック公式アートポスターを制作
2023年 個展「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」(アーティゾン美術館)
日本の伝統的絵画の様式を用い、油絵という技法を使って描かれる作風が特徴。
都市鳥瞰図・合戦図などの絵画のみならず立体、漫画、インスタレーションなど表現方法は多岐にわたる。
成田国際空港、東京メトロ日本橋駅のパブリックアートや、新聞小説・書籍挿画・装画など幅広い制作活動を展開。 
私は自分から賞に応募するメンタリティがないものですから、応募される皆さんは強い心をお持ちなのだと敬服いたします。色々な動機がおありでしょうが、賞にかからなかったからといって何かネガティヴな心持ちにだけはなられませんよう願うものです。
絵が描けたというだけで、そこに絵はやってきてくれたのですし、それは絵に受け入れられたということです。もう、祝福されているということです。
皆さんに良い制作の時が訪れますよう。
優秀賞、山川智隆さんの「前と後ろの間」。
ガラス越しの実像とガラス面に映った虚像の織り成す空間。目で追うほどに幻惑されますが、虚像と実像は消失点を共有し、目を画面の奥へと導く実像の引力と虚像による斥力が含まれるのを感じます。
透過図法とでもいうべき遠近法の実践の中に、油彩画における透明層と基底面を作る不透明層の関係が、モティーフの透過性と艶の引けたテンペラによる荒い絵肌の関係へと変奏されたようであり、見えざるガラス表面と虚実の像が織りなす関係や、線遠近法に寄与する要素と平面レイヤとの関係へと読み替えられたようでもあります。
明部が「明」ではなく「白」になり気味なのはタイトルを鑑みるに意図的かも知れませんが、明部に適切な色相を付与して得られるであろうよりクリアな空間性のヴァージョンにも興味が湧きます。
山口晃賞は米田真善美さん「自然の融合」。
暗渠の出口と思しき、陽の差し込む水路。暗渠内からはアーチ状の天井が水面に映って円を成して見えます。作者はこの現象に触発されたのか、暗渠出口を水平方向に一度、更に垂直方向に一度鏡像展開させ、都合四つも描き出します。象限よろしく四つ並んだ緑の円の景を、なんと見れば良いのでしょう。
巨大な複眼を持ちその眼に世界を映す昆虫のようであり、青い地球を型どり四態を表した天文機器のようでもあります。世界を見る目であり、見られる世界そのものでもあるのです。しかし、何より思うのは、それらの形を絵にしたというよりは、この絵自体を装置にして何かを観測した痕跡のように見えて仕方ないということです。
それには、このおぼつかない筆跡が与えてくる印象が大きく、暗色の下地の上にとつとつと置かれる白い絵の具は、各象限に一義に打った座標のようで、一筆へのこだわりが雪がれています。そこに加えられるグレージングが大変効果的で、透明度は画面に抜けの良さと広がりを与え、響き合う緑と紫が筆致のおぼつかなさを豊かに潤し、層的な重なりは空間の圧縮度合いを示し、座標とは異なる観測の指標を表すようです。
全体を知りようもないくらい大きく遠いものに絵と筆を通して触れようとした、素晴らしく謎めいて美しい痕跡。作者のお名前、真・善・美のうちの一つ「美」という、或る完全性のへのアプローチ。そのように見える作品です。

- 審査員
山下 裕二( Yamashita Yuji )
1958年、広島県生まれ
東京大学大学院修了。
美術史家。
明治学院大学文学部芸術学科教授。
室町時代の水墨画の研究を起点に、縄文から現代美術まで、日本美術史全般にわたる幅広い研究を手がける。
著書に『室町絵画の残像』『岡本太郎宣言』『日本美術の二〇世紀』『狩野一信・五百羅漢図』『一夜漬け日本美術史』『伊藤若冲鳥獣花木図屏風』『水墨画発見』『日本美術の底力』『商業美術家の逆襲』『日本美術をひらく』など。
企画監修した展覧会に『ZENGA展』『雪村展』『五百羅漢展』『白隠展』『超絶技巧!明治工芸の枠』『20世紀琳派 田中一光』『小村雪岱スタイル』『コレクタ-福富太郎の眼』などがある。
今回は、出品点数1066点、出品者数822名もの応募があった。前回からさらに増えて、ここ15年でもっとも多い結果となったという。私が審査員をつとめるのは11回目だが、コロナ期をはさんで、その後この公募展が広く認知されてきたことを喜ばしく思う。
大賞を受賞したかわしまともこさんの「君はだあれ?(Who are you?)」は、私がもっとも強く推した作品である。古びた小学校の廊下が極端な透視遠近法で描かれている。光と影の描写が秀逸だ。キツネの面を付け、制服を着てランドセルを背負った少年が振り返る。その視線(面で隠されているので目は描かれていないが)の先には、やはりランドセルを背負ったキツネがいる。そしてキツネの後頭部には少年の顔のお面が。作者は、いったいどうしてこんなヴィジョンを脳裏に浮かべることができたのだろう。童話などに触発されたのか、そうではないのか、授賞式の折にぜひ聞いてみたいと思う。ともあれ、絵を描く喜びがいちばん伝わってきたのは、この作品だった。
東京都知事賞を受賞したnobuさんの「BEYOND THE MEMORYⅡ」という作品も、私が一次審査の段階から高く評価した作品だった。これはまさに、昭和という時代の記憶を描き込んだ作品。中央に描かれるのは、学校の先生と12人の生徒。壺井栄の「二十四の瞳」の一場面だろう。その左上には、8時15分で止まった時計。広島に原爆が投下された時刻である。その他にも、昭和の記憶を物語る情景がさまざまに描き込まれて、前景には後ろ姿の現代の少年少女が。私も、子や孫に昭和の記憶を伝えたいと思っているから、そんなメッセージに深く共感した。
そして、私の個人賞とした和崎正美さんの「煩悶」という作品。これは、間違いなく今回の応募作の中で最高の写実的技量を示したものだと思う。人体、衣服の描写はもちろん、黒板に書かれた文字がいい。私以外の審査員は全員実作者だから、こういうまっとうなリアリズムの作品を評価しにくい傾向があると思う。だからこの作品を高く評価し、私の個人賞とした。
授賞式で作者たちと語らうことを楽しみにしています。