第14回 世界絵画大賞展 2018 審査員講評

国籍を問わず広く世界から作品を募集するとして、2005年に「世界絵画大賞展」はスタートしました。

今年も最年少2歳から最年長88歳までのさまざまな年齢の方々、そしてさまざまなキャリアの皆様から874点のご応募をいただきました。どの作品も優れた表現力を生かし、パワー溢れる力作ばかりでした。多数のご応募をいただき、誠にありがとうございました。

4名の審査員による 厳選な審査の結果、入賞47点・入選155点の計202点が映えある栄誉を獲得されました。おめでとうございます。

独自の発想が審査員をうならせた作品。自分を信じて徹底的に自己を追及した作品。作者の内面を鋭く表現した作品。暖かなユーモア漂う作品。そんな作者たちの”熱き感性”をぜひご高覧下さい。

この展覧会が皆様の完成を揺さぶる、またとない機会になれば幸いです。
最後に本展開催にあたり、ご協力をいただきました審査員ならびに関係各位・各社に深く感謝の意を表しまして、ご挨拶と致します。

第14回 世界絵画大賞展 2018 審査員講評


■ 審査委員長  遠藤 彰子(えんどう あきこ)

  • 1947年東京都生まれ。 武蔵野美術短期大学卒業。
    78年昭和会展林武賞。86年安井賞展安井賞、文化庁芸術家在外特別派遣(~87年・インド)。04年府中市美術館にて個展。07年平成十八年度芸術選奨文部科学大臣賞。14年上野の森美術館にて個展。14年 紫綬褒章 受章。
    現在、武蔵野美術大学教授、二紀会委員、女流画家協会委員

■審査を終えて

世界絵画大賞展は今年で14回目を迎えました。出品された874作もの応募の中から、審査員一同慎重な議論を重ね、入選作品として202作を選ばせていただきました。

大賞の村山建司氏の「吾朗さんが見た風景」は、描くことへの喜びが感じられるような作品です。世界的な名画をちりばめつつも、決まりごとの世界にはない鮮度が感じられる点も評価のポイントとなりました。誰しもが作品に深く感銘を受けた時に、これまで認識していた世界が変容し、以前とは別の世界に自分がいるような感覚を受けることがあります。そんな感覚を素朴なタッチで描き、牧歌的な風景と重ね合わせることによって、夢想的な世界観を創り出すことに成功しているように思いました。

遠藤彰子賞の小波一平氏の「月の写像」は、抑えた色彩と銀箔の輝きがまさに月のように輝いて見えました。写真だと判りづらいのですが、銀箔の強さとモノクロの調子の幅とが呼応するように表現されており、高い技術力を感じました。

今年は応募者数が増えたこともあり、当落選上の攻防が厳しく、入選作品の選定はかなり難航しました。落選した作品のなかにも佳作が多数ありましたし、常連の方々の作品も以前より確実に良くなっているように思いました。

当賞展は以前から、創造性が表れている作品を尊重してきたことが、美術界で活躍する新人を多く輩出してきたという結果につながっているのだと思います。今後も既成観念の脈絡を断ち切るような新たな創造性に期待したいと思います。


■ 審査員  絹谷 幸ニ( きぬたに こうじ)

  • 1943年奈良県生まれ。62年 奈良県立奈良高等学校卒業。66年 東京芸術大学美術学部油画科卒業(小磯良平教室)。
    67年 独立賞受賞。68年 同大学院壁画科(島村三七教室、アフレスコ古典画研究)卒業。独立美術協会会員となる。70年 イタリア留学(ヴェネツィア・アカデミア入学、ブルーノ・サエッティー教授、アフレスコ古典画法等研究)。74年 第17回安井賞受賞。78年 マニフェスト賞受賞(イタリア・マニフェスト展)。83年 第2回美術文化振興協会賞受賞。87年第19回日本芸術大賞受賞。89年第30回毎日芸術賞受賞。93年 東京芸術大学美術学部教授。97年冬季オリンピック長野大会公式ポスター・競技別ポスター原画制作。
    01年独立美術協会第68回展出品作≪蒼穹夢譚≫ にて日本芸術院賞受賞。芸術院会員となる。08年若手芸術家を顕彰する「絹谷幸二賞」を創設する。14年NHK放送文化賞受賞。10年、東京藝術大学教授退官。15年大阪芸術大学教授退官。現在、日本芸術院会員。独立美術協会会員。東京藝術大学名誉教授。14年 文化功労者。

■第14回世界絵画大賞展審査評

本年も審査に参加して、第14回世界絵画大賞展の出品作のレベルは年々向上してきている様に思えました。絵は描く人の心がおのずから写し出される鏡のごとくだと思いますが、それぞれの画面から皆様の顔がのぞいている様で楽しく拝見し、皆さんと語り合うことが出来ました。

本年の大賞に輝いた村山建司さんの『吾朗さんが見た風景』は古里(ふるさと)日本の田園風景を様々な人々と共に余すところなく描き切って、楽しい作品となっていました。そして絵をつぶさに見ますと世界中の画家が描いた作品の人物たちが随所に登場していて新鮮な発想となっていました。

優秀賞の村上泰斗さんの『お日様と影』は、絵の上手下手は差し置いても、描くことへのいたたまれない意欲が見る私たちに直接強く伝わってきて、やむにやまれない素晴らしい心の振動が見事に画面に写し出された秀作だと思いました。
村上さんは絵を突然描き出して1年にしかならないと後でわかりましたが若々しい初心の作家魂が私たちの心を打ったと言えます。
又、同じく優秀賞の漆畑流さんの『楽園に溺れる』は二匹のカエルの姿に、生きとし生ける者は皆友達だというメッセージが込められた好感の持てる作だと思いました。

なお都知事賞の馬場敬一さんは力強く裸婦を真正面から描き切っていました。
又、絹谷幸二賞のテラサワマスミさんの「のぞく①(うさ彦シリーズ)」は画にユーモアがあり、明るくスッキリした現代と向き合う感覚があります。プラスチックとゴミの問題は今や全世界的な大問題でもありますが「皆さんどうしましょう」と画面の人物は言っている様でもありました。

他にも幾多の秀作がひしめき合い、30号大の大きさの作品が描く作者の視野にすっぽりと入る人間の手はばの寸法にも合う適した大きさだと思えました。ただ、しいて言えば長年描き続けているベテラン出品者にとっては絵に進取の気性が薄れややもするとマンネリになっている感がありました。技術だけに走ると、画中の気が抜けて、手先だけとなっているのは少し残念でした。

なお、選にもれた作の中にも素晴らしい気合の入った作もあり、次回作に待ちたいと思いました。


■ 審査員  佐々木 豊( ささき ゆたか)

  • 1935年 名古屋市生まれ。 49年 三尾公三に出会い油絵を始める。 59年 国展国画賞(同'60)同35周年記念賞(‘61)59年 東京芸術大学油画科卒業。61年 同専攻科修了。
    60年~ 個展多数/67年 世界一周旅行。72年 U.S.Aフェーマス・アーチスト・スクール研修。78年~ 第1回現代の裸婦展準大賞・安井賞展・明日への具象展・具象絵画ビエンナーレ・日本秀作美術展・国際形象展・日本洋画再考展・現代の視覚'91展出品。92年 安田火災東郷青児美術館大賞。 98年 両洋の眼展倫明賞(同’01)元 明星大学教授。
    現在、国画会会員。

■素朴派(ヘタウマ)の勝利

アンリー・ルソーのような素朴派を日本では70年頃からヘタウマというようになった。

大賞の村山建司氏と優秀賞の村上泰斗氏がそれである。「この手を上位の賞にすると、美大でデッサンに励んでいる画学生が応募しなくなるかもね。村上氏は油絵を始めて1年足らずのアマだもの。」と言うと、「アマでもいい。」と山下裕二氏。「なら断然、村山氏だね。パクり方が見ものだ。西洋名画がつまった金庫に、白昼堂々手をつっ込んで…」

これまで、数多くのヘタウマとつき合ってきたが平面的で、どんな大きさの絵でも、画面巾の1/5くらいの人物を散らして配置する構図が多い。子どもの絵と同じだ。その画一性が気になる。

で、小生が大賞に推したのが漆畑流氏のかえるの絵だ。でも自信はない。そつのない技術だけの絵ではあるまいか?この作家の他の絵を何点か見たいと思った。

東京都知事賞の馬場敬一氏の人物画は傷つけた絵肌で見せる絵だ。大作が描ける腕力もありそうなので、先行きを注目したい。

シニア賞の冨美七朗氏にはわけの分からない面白さがある。

学生賞の朝倉亮氏は顔と機械の組み合わせ方に迫力がある。見事なデッサンに支えられているからだろう。

佐々木豊賞の中村龍弥氏は笑わせる。野獣に乳房とたいこ腹なんて。


■ 審査員  山下 裕二(やました ゆうじ)

  • 1958年、広島県生まれ。東京大学大学院卒業。美術史家。明治学院大学文学部芸術学科教授。
    室町時代の水墨画の研究を起点に、縄文から現代美術まで、日本美術史全般にわたる幅広い研究を手がける。
    著書に『室町絵画の残像』、『岡本太郎宣言』『日本美術の二〇世紀』『狩野一信・五百羅漢図』『一夜漬け日本美術史』『伊藤若冲鳥獣花木図屏風』『水墨画発見』など。企画監修した展覧会に『ZENGA展』『雪村展』『五百羅漢展』『白隠展』『超絶技巧!明治工芸の枠』『20世紀琳派 田中一光』などがある。

■絵を描くよろこび

一昨年、昨年に続き、三度目の「世界絵画大賞展」審査員をつとめさせていただいた。高齢化に伴い、このような公募展に出品する人が減少しているという話をよく聞くが、今回は前回より出品者が増えたとのこと、喜ばしいと思う。

審査員は前回と同様で、ある程度気心が知れているから、入選作の選定、上位入賞者候補の選定まではスムーズに進んだ。しかし、最後の大賞、優秀賞の選定に際しては、多少の議論があった。結果として、私が強く推した村山建司さんの「吾朗さんが見た風景」が大賞となったことはもちろん嬉しいが、議論を経たことによって、より充実した選考を行うことができたと思う。

大賞受賞作は、モティーフを再現的に描写する技量が優れているわけではない。むしろ稚拙といってもいい。しかし、一言でいえば、「絵を描くよろこび」がもっともあふれだしている作品だと思い、私は強く推した。

どこにでもありそうな、農村の風景。だが、細部に眼を凝らせば、そこここに西洋美術史上の作品からの引用が見られる。ルソー、マネ、モネ、ゴッホ、ゴーギャン、ミレー・・・。さらに、右下の後ろ姿のセーラー服の女性は、会田誠「あぜ道」からの引用かもしれない。

しかも、それらのモティーフが、原画を忠実に再現するようなものだったら、かえって興ざめかもしれないが、どの部分にも、しっかりこの作者の「味」が活かされた、いい意味での「ゆるい」模写になっているのである。そして、野球をする少年たち、結婚式の新郎新婦などは、この作者の人生を投影したものなのだろうか。

また、私の個人賞とした、いまるしおさんの「マンダラ」は、一見してコンピュータから出力したものかと思ったが、実は精緻に描かれたペン画で、スーパーフラットな背景と、繊細きわまりない線描のクオリティーに瞠目した。