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第4回世界絵画大賞展

■ 審査員のことば ■

   審査員長 佐々木豊(画家)

絵は見た瞬間の最初の一撃が効くんだな。
上海のアートフェアーで自作が受けたダメージを引きずったまま、二日後の審査に臨んだ。
西川美穂氏の「オトナとコドモ」に出会った時、うん、これなら拙作を打ちのめした上海のあのハードパンチャーともいい勝負だ。
そう思って改めて見直すと既に四票を得ている。
大賞はこれで決まりだ。
それにしても顔を大きく描くのは、世界的な流行なのだろうか。
開催中のアヴァンギャルド展(国立新美術館)でも見られたが、確かに大顔は迫力を生む。
その上、西川氏の顔は白の下塗りを生かして、色彩が透明で鮮烈、水彩画のような"にじみ"の味わいもある。
唐突ともいえる朱の大胆な輪郭線を入れられるところに柔軟な感性をみる。
黒・白・赤の対比は私の専売特許なんだけど、やられた。
優秀賞の奥村晃史氏茅野のり子氏は、堅実な写実と奔放な筆触という違いはあるが、共に愉快な絵だ。
片や蓋を開けると豚が寝ている。
もう一方はお風呂でシュノーケルでの潜水だ。
発想の意外性の勝利である。
他に興味の中心がいくつも点在する岩崎朝子氏(佐々木豊賞)のイメージと構成に引かれた。

   審査員 本江邦夫(美術評論家・府中市美術館館長)

昨年と同様、全体としてドングリの背比べの印象でしたが、西川美穂さんのどこか病理的で鬱屈した「オトナとコドモ」はその異形の人物描写の圧倒的な強さのせいか、すべての審査員から注目を浴びた唯一の作品でした。
遠藤彰子さんから加藤泉の影響が強いのではないかとの指摘はありましたが、私にはむしろベーコンの流れを汲んだ実存主義的で大胆な人間表現のように思えました。
審査後、この方の年齢が19歳と知ってびっくりしました(審査のときは画面しか見ないので、ときに予想外のことがおこります)。
怖いもの知らずの若さの特権を感じます。
これとは打って変わって伸びやかなのが、中岡奈津美さんの岩彩の風合いを生かした「新羅の古墳に遊ぶ蝶」です。
少女の潜む、形態の入り組んだ蓮の葉のある前景から、緑の丘を望む後景へと空間をつないでいく手際がみごとです。
風通しのよい、希望に満ちた絵です。
背景の無数の小さな点を私は真昼のお星様のように感じていましたが、じつは蝶々であるとのこと。
蝶は西欧では伝統的に魂の象徴です。
古墳に蝶が似合うのは当たり前かもしれません。
黒木南々子さんの「心は紫陽花の花」も一見したところ底抜けに明るい家族の団欒の図です。
明るすぎて、一瞬怯んでしまうような不気味さもありますが、家族というものはこうあってほしいという作者の切実な叫びがきこえてきそうです。
人物とか花を貼り付けたレリーフの効果として、明るい画面全体が見る者に迫ってくるかのようで、よりメッセージ性が強まっています。
茅野のり子さんの「夏休みII」と奥村晃史さんの「豚のアタッシュケース」は共に、斬新な視点と、手堅い描写力で高い評価をえた作品です。
これにそれなりのコンセプトや主張が加われば鬼に金棒といえます。
しかし、これがなかなか難しいのです。
でも、だからこそやりがいがあるともいえるのです。

   審査員 絹谷幸二(画家・東京美術大学教授)

第4回世界絵画大賞展には多くの秀作が集まりました。
中でも大賞の西川美穂さんの「オトナとコドモ」は審査員4名の票を得て、大賞と決まりました。
コドモであったはずのオトナがコドモを理解出来なくなる不思議。
バックと人物の間隙に広がる赤朱色、口を開け不安な人物の様子。
人間の不条理な心理が絵に投影されたすばらしい作品だと言えます。
優秀賞の茅野のり子さん奥村晃史君の作品は個性が光り、どこかユーモアさえ感じます。
審査員賞の岩ア朝子さん中岡奈津美さん嶋村貴志君重松綾子さんなど、それぞれに図柄は違いますが何か祈りの姿を感じ取ることが出来ます。
人間に対して、又、静物・植物にさえも静謐に又は多様な色彩を自由奔放に使っていても、その根底に生きとし生ける者に対する愛情の姿が描き込まれている秀作郡だと言えます。
芸術新聞社賞の伊達光正君の作は機知とアイデアにとみ、国際展賞の黒木南々子さんの作にほのぼのとした家人の日々好日がのびのびと描かれています。
惜しくも上位受賞を逃したその他の作品の中にもみずみずしく新鮮な作品がありました。
協賛社賞の松下広樹周平前澤心太郎菊池俊幸葉山仁君
本間佳子加藤優子熊谷奈津子さんなどそれぞれにキラリと光る個性があったと思います。
最後に第4回展には、惜しくも入選出来なかった作品群の中にも良作が沢山あったことを書き記しておきたいと思います。

   審査員 遠藤彰子(画家・武蔵野美術大学教授)

例年通り、傾向としては具象作品が多かった。
全体的に多様な試みがされていて、前年より確実に質は向上していた。
大賞の西川美穂氏の「オトナとコドモ」は、鮮やかな色彩が単純化されたフォルムによって強く惹き立った作品である。
片目だけをリアルに描くことによって、ある種の曖昧さが引き締まり、幻想と現実の二面性が上手く表現されていた。
優秀賞の奥村晃史氏の「豚のアタッシュケース」は、モチーフの組み合わせがユーモアを誘うと同時に、私たちの日常性は、これらを食することで成り立っているという現実を思い知らされるような作品であった。
鑑賞者が読み解くことの出来る作品であり、面白く拝見した。
同じく優秀賞の茅野のり子氏の「夏休みU」は、正方形の画面における構成が考えられた作品で、直線と曲線、固体と液体を対比として配置し、子供と水の動きが画面を絵として成り立たせている。
描写の素朴さが強さに変わり、好感の持てる作品であった。
遠藤彰子賞の嶋村貴志氏の「思考する果実'08‐3」は描写力が際立っており、非現実の世界でありながら不思議と親近感を感じた。
変容が魅力的であることとイメージが描写力に裏打ちされているところが、私好みの作品であった。
惜しくも選外になった作品の中にも、落としがたい作品が多数あり、最終審査では相当悩んだ。
やはり、作家の独自の試みが感じられる作品は、テクニック以上に眼を惹くものだと感じる。
また、大作とは違った小さい作品ならではの魅力を活かすことも重要な鍵となる。
今後も大いに期待したいと思う。

   審査員 芸術新聞社 茂野裕(美術新聞社取締役)

今年も昨年に引き続き審査をさせていただいた訳ですが、まず全体的な感想は、残念ながら応募作品の内容に、前回と大きな差異は見られなかったというのが率直なところです。
つまり他を圧倒し、突出した作品には遭遇し得なかった。
ただ、今回の審査経過で感じたことは、憶測ではあるが審査員の票が意外に割れていたのではないかということでした。
入選の選考と入賞候補を絞り込む段階で、審査員各々の判断が割れることはまずないのだが、最後の大賞、優秀賞、個人賞を決定する段になって、私が繰り返し票を投じていた作品で、賞候補作品に残ったのは茅野のり子さん「夏休みU」のみであったということにもよる。
つまり、この度の大賞に決まった西川美穂さんの「オトナとコドモ」は入選決定段階ではもちろん票を投じたが、以後の入賞・個人賞候補とは考えず審査を進めていたこと、各個人賞も同じような経緯、結果であったことによる。
そして、「芸術新聞社賞」を決める段階でも思わぬ逡巡をすることになった。
実は、審査開始早々、今回はほぼ「夏休みU」だなと自身を納得させながら審査をこなしていた。
ところが、個人賞を決定する段になり、審査を繰り返すたびに気に掛かっていた伊達光正さんの「時の空U」を無視できなくなっていた。
それは支持体はダンボール、さらに手でちぎったと思われるダンボールの切れ端を表裏使い分けコラージュ、水彩やアクリルなどでポイントを彩色、ドローイングでさらに調子をつけたものだ。
決して声高に主張する作品ではないが、その形態の奔放さと自由かつ繊細な線の妙に、逆に他の作品には無い強烈な個性を感じたのだ。
その他二人の作品に拮抗するものも1、2点あり、行きつ戻りつしたのだが、結果、最後になって踵を返すように伊達さんの作品に決定させていただいた。


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